22 ネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群は、高度蛋白尿、低蛋白血症、高コレス テロール血症、浮腫を特徴とする比較的頻度の高い腎臓病 です。本疾患はいずれの年齢相でも発症するが、成人と比 較すると、小児の罹患率のほうが高い。ネフローゼ症候群 は、治療反応性によって、不完全寛解、無効、完全寛解、 に分類されますが、なかには頻回再発をきたす症例もみら れます。本疾患は、長期にわたり寛解・再燃を繰り返す疾 患であり、小児とその家族にとって悩ましい疾患です。

ネフローゼ症候群とはどんな疾患でしょうか?

腎臓の働きは血中の老廃物と過剰水分を濾過し、尿として 排泄することです。血液を濾過するフィルターは非常にタ イトで、通常蛋白は通過しない仕組みになっています。 ネフローゼ症候群では、この濾過フィルターの目が粗くな り、蛋白が尿中に漏出します。蛋白が尿に漏出するので、 血中蛋白レベルが低下し、低蛋白血症が浮腫の原因となり ます。尿蛋白量と低蛋白血症の程度に応じて、浮腫の程度 もかわってきます。腎機能自体は、ほとんどの症例で正常 です。

小児において繰り返しみられる浮腫の原因で最も重要 な疾患は、ネフローゼ症候群である

ネフローゼ症候群の原因は?

小児ネフローゼ症候群(特発性ネフローゼ症候群)の90% 以上は原因不明です。病理学的には、微小変化型ネフロー ゼ症候群、巣状糸球体硬化症、膜性腎症、膜性増殖性糸球 体腎炎の4疾患が特発性ネフローゼ症候群の原因となりま す。特発性ネフローゼ症候群は、ある意味除外診断となり ます。つまり二次性の要因が否定された際に特発性と診断 されます。 ネフローゼ症候群の10%未満が感染症、 薬剤性、 悪性腫瘍、遺伝性、糖尿病や全身性エリテマトーデスのよ うな全身疾患による二次的な要因で発症します。

微小変化型ネフローゼ症候群

小児のネフローゼ症候群で最も頻度が高い疾患は微小変 化型ネフローゼ症候群です。6 歳未満の小児の特発性ネフ ローゼ症候群の90%、 6歳以上の小児の65%が本疾患です。 ネフローゼ症候群と診断されて、血圧が正常、血尿がみら れず、血清クレアチニンと補体(C3)が正常値である症例 では、本症を強く疑います。ネフローゼ症候群のなかでも 治療反応性がよく、90%以上の症例でステロイドが有効で す。

小児ネフローゼ症候群は 2-8歳に好発する

2-8歳に好発する。 女児よりも男児の発症率が高い傾向 にある。

ネフローゼ症候群の症状

  • ネフローゼ症候群はいずれの年齢相でも発症するが、
  • 小児ネフローゼ症候群の初発症状は眼瞼や顔面の浮腫 であることが多い。眼瞼浮腫がみられ、初めに眼科を 受診するケースもある。
  • 眼瞼や顔面の浮腫は夕方よりも早朝に顕著にみられる。
  • 時間経過とともに、浮腫は下腿、手指、腹部に広がり、 体重増加がみられる。
  • 上気道炎や発熱後に浮腫がおこることが多い。
  • 浮腫を除けば、患者の状態は良好で、病的にはみえな い。
  • 尿量の低下がしばしばみられる。
  • 尿の泡立ちが特徴的である。
  • 肉眼的血尿や呼吸困難、高血圧は通常みられない。

ネフローゼ症候群の合併症は?

ネフローゼ症候群の合併症は、易感染性、血栓症、栄養失 調、貧血、高コレステロール血症や高中性脂肪血症による 心疾患、腎不全、治療薬剤の副作用等があげられます。

小児ネフローゼ症候群の初発症状は、眼瞼や顔面の浮腫 である

診断

A. 初期検査

浮腫を呈する患者でネフローゼ症候群の 診断には、(1)高度蛋白尿、(2)低蛋白血症、(3)血中コレステロール 高値が重要です。

1.尿検査

  • ネフローゼ症候群の診断の第一歩は尿検査です。通常 尿蛋白は陰性ですが、3+、4+の蛋白尿はネフローゼ症 候群を疑います。
  • ネフローゼ症候群の診断において、アルブミン尿は特 異的な所見ではありません。蛋白尿がみられた際には、 原疾患の究明が重要になります。
  • 治療開始後、尿蛋白は治療反応性をみるのに有用です。 蛋白尿の陰性化は治療反応性を示す根拠であり、家庭 でも尿試験紙を用いて尿蛋白を推定することができま す。
  • 尿沈渣では、赤血球や白血球は通常にみられません。
  • ネフローゼ症候群では、3g/日以上の尿蛋白を呈します。 尿蛋白排泄量は 24 時間蓄尿、あるいは、尿蛋白/尿中 クレアチニン比で推定することができます。尿蛋白量 の程度に応じて、軽度、中等度、高度蛋白尿に分類し ます。1日尿蛋白排泄量は、診断だけではなく、治療効 果をみるのに有用です。
尿検査は、ネフローゼ症候群の診断だけではなく、治療 効果をみるうえで極めて重要である

2.血液検査

  • ネフローゼ症候群の血液所見では、低アルブミン血症3g/dL未満)と高コレステロール血症を特徴とする。
  • ネフローゼ症候群では血清クレアチニン値は正常であ る。血清クレアチニンは腎機能を総合的に評価するの に測定される。
  • ほとんどの患者において血算はルーチンで測定される。

B. その他の検査

ネフローゼ症候群と確定診断できたら追加検査を選択し ます。 これらの検査により、 ネフローゼ症候群が一次性 (特 発性)なのか全身疾患に続発したものなのかが判断できま す。また関連性のある問題や合併症などの存在を見つける ことが出来ます。

1.血液検査

  • 血糖、血清電解質、カルシウム、リン
  • HIV、B型•C型肝炎、VDRLテスト
  • 補体(C3, C4)、ASO価
  • 抗核抗体(ANA)、抗ds-DNA抗体、リウマチ因子、クリオ グロブリン

2.画像検査

  • 腹部超音波で腎臓のサイズや形状を確認し、また腫瘍 や腎結石・腎嚢胞やその他の閉塞機転や奇形の有無を みる。
  • 胸部X線で感染症を除外する。
診断の手がかりとして重要なのは、尿中への蛋白の喪失や低蛋白血症、高 コレステロール血症、そして血清クレアチニン値が正常であることである

3.腎生検

ネフローゼ症候群の確定診断に腎生検はもっとも重要で す。腎組織を少量採取し、検査室で検査を行います(詳細 はChapter4参照)。

治療

ネフローゼ症候群の治療の目標は症状を緩和すること、尿 中への蛋白喪失を是正すること、合併症を予防、治療し、 腎臓を保護することにあります。通常この疾患を治療する にあたって長い期間(数年)を要します。

1.食事指導

  • 治療が奏効し浮腫が消失すれば食事制限の内容は変わ りうる。
  • 浮腫のある患者: 食事中の塩分を制限し、調味料とし ての塩・塩分含有量の多い食べ物を控えることで、水 分の蓄積や浮腫を予防できる。通常水分制限は必要で はない。
  • 高用量のステロイドを投与されている患者では、 高血圧 への進展のリスクを予防するためにも、 浮腫がなくても 塩分制限をする。
  • 浮腫のある患者では、蛋白質の喪失を補い低栄養を予防するためにも適量の蛋白を摂取すべきである。また 適切なカロリー、ビタミンの摂取も必要である。
浮腫のある患者では塩分制限が必要であるが、症状のな い期間は不必要な食事制限は避ける

  • 症状のない患者: 症状がない期間は、「通常の健康的 な食事」 を摂ることとし、 不必要な食事制限は避ける。 適量の蛋白質を摂取する。ただし、腎障害を予防する ために高蛋白食は避け、腎不全がある場合には蛋白摂 取は制限する。果物や野菜の摂取を増やす。血清コレ ステロール値をコントロールするためにも脂質の摂取 は減らす。

2.薬物療法

A.特有の薬物療法

  • ステロイド療法: ネフローゼ症候群の寛解導入に対す る標準治療はプレドニゾロン(ステロイド)です。小 児ではほとんどがこの薬物に反応します。浮腫や尿蛋 白は 1-4 週間以内に消失します(尿蛋白陰性で寛解と される)。

代替療法: ステロイド治療に反応せず、尿蛋白が持続する 一部の小児例では、腎生検などによる更なる精査が必要に なります。そのような患者では、レバミゾールやシクロホ スファミド、シクロスポリン、タクロリムス、ミコフェノ ール酸モフェチル(MMF)などの代替薬が使用されます。 これらの薬物はステロイド療法と併用され、ステロイドを漸減する際の寛解維持を補助します。近年リツキシマブが 難治性ネフローゼ症候群(頻回再発型あるいはステロイド 依存性を示す場合)に有効であることが示され、保険適応 となりました。

ネフローゼ症候群の再発の原因として感染症は重大で あり、小児の感染予防は不可欠である

B.補助療法

  • 利尿剤により尿量を増やし浮腫を減少させる。
  • 血圧のコントロールや尿蛋白の減少に ACE 阻害薬やア ンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬などの降圧薬が使用さ れる。
  • 抗生剤により感染症(敗血症、腹膜炎、肺炎など)を 治療する。
  • スタチン(シンバスタチン、アトルバスタチン)によ りコレステロールや中性脂肪を低下させることで心血 管障害を予防する。
  • カルシウム、ビタミンD、亜鉛の補充
  • ステロイド性胃炎を予防するのにラビプラゾール、パ ントプラゾール、オメプラゾール、ラニチジンなどを 用いる。
  • アルブミンの点滴は効果が一時的であり一般的には用 いられない。
  • ワーファリン(クマリン)やヘパリンなどの抗凝固薬 を用いた血栓の治療や予防が必要となることもある。
ネフローゼ症候群は長期間継続することが多い疾患であり、医師によるフ ォローアップの他に日常的に尿定性を確認することが重要である

3. 原因に対する治療

糖尿病性腎症やループス腎炎、アミロイドーシスなどの二 次性ネフローゼ症候群の原疾患に対する慎重な治療は重 要である。これらの疾患に対する治療はネフローゼ症候群 をコントロールするうえで不可欠である。

4.まとめ

  • ネフローゼ症候群は数年にわたり加療が必要な疾患で ある。患者の家族は、この病気の性質や転帰、用いら れる薬物とその副作用、感染症に対する予防と早期治 療の有益性などについて教育されることが好ましい。 浮腫を認める再発期間においては、より注意深いケア は必要であるが、寛解している間は患児を通常の子供 と同様に扱うことを強調しなければならない。
  • ネフローゼ症候群では、 感染症はステロイドによる治療 を始める前にしっかりと治療されていなければならな い。
  • ネフローゼ症候群に罹患した小児は呼吸器などの感染 症を合併しやすい。 感染症を合併することで、 コントロ ールされていた病態が再発につながる場合があるため (治療を受けている期間でも)、感染症の早期発見•早 期治療は重要である。
プレドニゾロン(ステロイド)はネフローゼ症候群の第 一選択薬です
  • 感染予防のために、患児とその家族は清潔な水を飲み、 手洗いを励行し、 人ごみを避け、 感染症の患者との接触 を控えるように努力する。
  • ステロイド加療が行われる際には、ワクチンの投与も 必要である。

5.モニタリングとフォローアップ

  • ネフローゼ症候群は長期間継続することが多いので、 医師の定期的なフォローアップが重要である。フォロ ーの間は、尿蛋白量、体重、血圧、身長、薬剤の副作 用などを評価する。
  • 患者は頻回に体重を測定・記載することが重要である。 体重の記録は体液量のよい指標になる。
  • 患者家族は日常的にテステープでの尿蛋白のチェック とその結果および加療の内容を記録することを求めら れる。こういったことを実践することで再発を早期に 診断でき、その後の適切な治療へとつながりやすくな る。

ネフローゼ症候群になぜ、どのようにプレドニゾロンを投 与のでしょうか?

  • ネフローゼ症候群の治療の第一選択薬はプレドニゾロ ン(ステロイド)であり、尿蛋白を減少させる効果が ある。
経口ステロイド加療は病気の治療、頻回再発の予防、ス テロイドの副作用を減らすことにおいて重要である。
  • 医師はプレドニゾロンの投与方法、投与期間、投与量 を決定する。患者は胃への刺激を避けるために食事と
  • 一緒にこの薬を内服すべきである。
  • 初発時の治療は大きく 3 つの時期に分けられるが、初 期投与量は通常 4 週間行うことが多い。4~6 週は連日 内服し、その後は隔日投与とし、最後にプレドニゾロ ンを漸減、中止していく。ネフローゼ症候群の再発時 の治療は初発時の治療とは異なる。
  • 1~4 週間の治療内で患者は症状もなくなり、尿蛋白が なくなることもある。しかし、プレドニゾロンの副作 用を懸念して治療を中断することはするべきではない。 頻回の再発をさけるためにも治療計画を全うすること が重要である。

プレドニゾロン(コルチコステロイド)の副作用?。

プレドニゾロンはネフローゼ症候群における治療で最も 使用される薬剤です。しかし、いくつかの副作用が存在す るためにこの薬剤は医師の指示のもと投薬されなければ なりません。

短期的作用

短期での副作用で多いものには食欲亢進、体重増加、顔面 浮腫、胃痛、易感染性、血糖上昇、高血圧、興奮、ざ瘡、 多毛があります。

ステロイド加療は食欲亢進、体重増加をもたらし、顔面 や腹部の腫脹を起こしうる

長期的作用

長期での副作用で多いものには体重増加、小児では発達遅 滞、皮膚ひ薄化、大腿・腕・腹部の皮膚線条、創傷治癒の 遅延、白内障、高脂血症、骨粗鬆症、大腿骨頭壊死や筋力 低下があります。

様々な合併症があるにも関わらず、なぜステロイドはネフ ローゼ症候群の治療に用いられるのでしょうか。

ステロイドの重大な副作用は周知されているが、同時に無 治療のネフローゼ症候群はそれ自体に危険を有してます。 ネフローゼ症候群は重篤な全身浮腫と低蛋白血症を引き 起こすことがあります。無治療のネフローゼ症候群は易感 染性、有効循環血漿量の低下、血栓症、脂質代謝異常、低 栄養、貧血などの様々な合併症を引き起こす可能性があり ます。小児では、しばしば感染が原因で死亡することがあ ります。

小児のネフローゼ症候群においてステロイドで治療した 例では死亡率は約 3%まで減少しています。専門医の指示 のもとにステロイドで至適投与量・期間の治療をすること は最も有効であり害が少ないといえるでしょう。ステロイ ドの重大副作用は治療を終了した後は消えます。治療効果と生命をおびやかす合併症をさけるためにはス テロイドの副作用はある程度は避けられないでしょう。

ステロイド治療は副作用を減らすためにも専門医の指 示のもとで行うべきである

小児のネフローゼ症候群では、ステロイドによる初期治療 で浮腫や蛋白尿が改善することが多いが、 3~4 週間後に顔 面の腫脹が再び出現することがありますがなぜですか?

ステロイドにより食欲が亢進し体重増加する作用と脂肪 の再分布の作用により顔面が腫脹するのです。ステロイド の副作用である満月様顔貌はステロイド加療開始から 3~ 4 週間で出現するため、ネフローゼ症候群自体での顔面浮 腫と間違われることがあります。

ステロイドの副作用である満月様顔貌とネフローゼ症候 群自体による顔面浮腫はどのように見分けるのでしょう か?

ネフローゼ症候群自体によるものは、眼瞼浮腫や顔面浮腫 から始まります。その後で足、手、全身へと広がっていき ます。ネフローゼ症候群自体の顔面浮腫は朝がもっともひ どく、夜には改善することが知られています。

ステロイドによるものは脂肪の再分布による作用のため、 顔や腹部にみられますが、手や足はもとのままかむしろ細 いことが多いです。そして、1 日の中で時間的変化があり ません。このように腫脹の出やすい部位や時間による特徴 によってこの二つを鑑別できます。

このような患者では血液検査が鑑別の手がかりとなりま す。腫脹のある患者で低蛋白血症/低アルブミン血症、高脂血症は再発を疑い、両者が正常範囲内の場合にはステロ イドの作用によるものを疑います。

最適な治療を選択するために、疾患の症状として浮腫を呈しているのか、またはス テロイドの副作用として起きている腫脹なのかを鑑別することは重要だ

どうして顔面浮腫の原因がネフローゼ症候群なのか、ステ ロイドの影響なのかを区別する必要があるのでしょう か?

患者に正しい治療を施すうえで、浮腫の原因がネフローゼ 症候群なのか、ステロイドの副作用なのかを区別すること は重要です。

もしネフローゼ症候群が原因であれば、ステロイド投与量 の増量や投与方法の変更、他の特定薬剤の追加や、一時的 な利尿剤の投与などが必要となります。

長期間のステロイド投与による浮腫である場合、疾病が抑 制されていないことを心配したり、副作用を懸念してステ ロイドを急いで漸減する必要はありません。医師の判断の もと、ネフローゼ症候群を制御するために長期間ステロイ ドを投与することは、正に治療の本質です。ステロイドに よる浮腫に対する利尿剤は無効であり、むしろ有害である ため推奨されません。

小児ネフローゼ症候群再発の頻度は?

小児ネフローゼ症候群再発の頻度は、50~75%とされてい ますが、個人差があります。

ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群に使用する薬剤は?

ネフローゼ症候群に対するステロイド治療が無効であっ た場合、レバミソール、シクロホスファミド、シクロスポ リン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル(MMF) が用いられます。

一般的な小児のネフローゼ症候群では、腎不全に至る可 能性は低い

小児のネフローゼ症候群で腎生検の適応は?

小児のネフローゼ症候群では、ステロイド治療を始める前 に腎生検を行う必要はありません。しかし下記の場合には 推奨されます。

  • 十分なステロイド量を投与しているにも関わらず効果 を認めない(ステロイド抵抗性である)場合
  • 頻回に再発する場合や、ステロイド治療に依存してい る場合。
  • 幼少期のネフローゼ症候群としては非典型的な特徴が ある場合。例えば、1 歳未満の発症、血圧上昇、尿中赤 血球の持続、腎機能障害、血中C3濃度の低値など。
  • 成人における原因不明のネフローゼ症候群では、ステ ロイド治療を始める前に腎生検を行う。

ネフローゼ症候群の予後と、治癒までの期間は?

予後はネフローゼ症候群の原因によって異なります。小児 のネフローゼ症候群では微小変化型ネフローゼ症候群が 最も多いですが、 この予後は良好です。 小児の微小変化 ネ フローゼ症候群のほとんどは、ステロイドへの反応性がよ く、慢性腎不全へ進行する可能性はほとんどありません。

ネフローゼ症候群は年余にわたりますが、年齢とともに 徐々に消えて行きます

小児のネフローゼ症候群のごく一部はステロイド抵抗性 を示し、 追加精査が必要となります (採血や腎生検など) 。 この場合、 他の薬剤 (レバミソール、 シクロホスファミド、 シクロスポリン、タクロリムスなど)での治療が必要とな り、慢性腎不全へ進行する可能性も高くなります。

適切な治療を施したネフローゼ症候群では、尿中への蛋白 漏出が抑えられ、患児は正常な状態に戻ります。ほとんど の場合、幼少期の間には再発を繰り返しますが、成長に伴 い再発の頻度は減少します。完全に治癒するのは 11~14 歳頃であることが多いです。このように小児ネフローゼ症 候群の予後は良好であり、成人しても一般的な生活を送る ことができます。

医療機関を受診するタイミングは?

ネフローゼ症候群である小児が下記のような状態である 場合、家族はすぐに受診に向けて動く必要があります。

  • 腹痛、発熱、嘔吐や下痢を認める場合
  • 浮腫、原因不明の体重増加、明らかな尿量減少を認め る場合
  • 徴候がある場合(例えば遊びを中断して活気がない状 態になったときなど)
  • 発熱を伴った重症な咳嗽や頭痛が続く場合
  • 水痘または麻疹を患った場合