2 腎臓とその役割

腎臓は人体の中でもっとも重要な臓器です。その機能不全 は深刻な病態となり死につながることもあり、非常に複雑 な構造と機能を持った臓器です。

腎臓には、有害な老廃物や尿毒素を排泄し、体液、ミネラ ル、化学物質などの体内バランスを保つという大きく二つ の重要な機能があります。

腎臓の構造
腎臓は有害な老廃物や過剰な水分をのぞいて尿を生成し ます。腎臓で作られた尿は尿管を経て膀胱にたまり、尿道 より排泄されます。

  • 男女問わずほとんどの人が腎臓を二つずつ持っている。
  • 上腹部背側に椎体を挟む部位に位置しており、下部肋 骨に守られている。(図参照)
  • 深部にあるので一般的には体表から触知することは困 難である。
  • 一組の空豆様の形状をしている。成人では長径 10cm、 短径6cm、厚さ4cm程度である。重量は約150-170グラ ムになる。
  • 腎臓で生成された尿は尿管を通って膀胱にたまる。尿 管は約 25cm で特殊な筋肉によって形成される中空のチュ ーブの形状である。
位置、構造、機能に男女差はありません

  • 膀胱は腹腔の下部前方に位置する筋肉で出来た中空の 臓器である。尿を貯留する機能を持つ。
  • 成人の膀胱は約 400-500mL の尿を貯留することが可能 で、容量近くまで尿がたまってくると尿意をもよおす。
  • 膀胱内の尿は尿道を通って排尿される。女性は男性より 尿道が短い。

どうして腎臓は生体にとって重要なのでしょうか?

  • 人は毎日違った量の違った内容の食事を摂る。
  • 体内の水分、塩分、酸なども、毎日変化する。
  • 食事として摂取したものがエネルギーに変えられる過 程で有害な毒素が産生される。
  • これらの因子が体液量、電解質、酸塩基平衡を変化さ せる。したがって、不必要な毒素の蓄積は命に関わる こととなる。
  • 腎臓は有害な酸や毒素を排泄するという極めて重要な 機能を担っている。同時に、水分、電解質、酸塩基平 衡のバランスを適正に保っている。

腎臓の機能とは何でしょうか?

もっとも大切な機 能は尿を作り血液 を浄化することで す。腎臓は老廃物、 過剰な塩分、不必 要な化合物を排除 します。重要な腎 臓の機能は以下の 通りです。





 

1. 老廃物の除去
老廃物を除去して血液の浄化をす ることがもっとも重要な働きです。 摂取される食事には蛋白が含まれ ています。蛋白は人体にとって成長 や回復の為に必須です。しかし蛋白 は利用されるときに老廃物を産生 します。

これらが蓄積すると生体に摂って 毒のように作用します。腎臓は血液 を濾過してこれらの老廃物を尿と して排出します。

クレアチニンや尿素窒素は重要な 老廃物であり、その血中濃度は簡単 に計測が可能であり、腎機能の指標 となります。両方の腎臓が障害を受 けると両者の血中濃度は上昇しま す。

2, 過剰な水分の除去
次に重要な機能は、余剰の水分を尿として排泄させて体液 バランスを保ち、体内の必要な水分量を一定にします。腎

臓がこの機能を失うと体液のバランスが崩れ浮腫などに つながります。

3. ミネラルと化合物のバランス
さらに腎臓は、 ナトリウム、 カリウム、 水素、 カルシウム、 さらに腎臓は、 ナトリウム、 カリウム、 水素、 カルシウム、 リン、マグネシウム、重炭酸といったミネラルや化合物の バランスをとって、体内組成を維持するという重要な機能 を持っています。

ナトリウム濃度の変化は意識障害を惹起し、カリウム濃度 の変化は心拍や筋緊張に影響を及ぼします。カルシウムと リンを正常域に維持することは骨や歯の健康維持に不可 欠です。

4. 血圧維持
腎臓はレニン、アンギオテンシン、アルドステロン、プロ スタグランジン等を産生し体内の水分と塩分の調整を行 い、血圧維持に重要

な役割を担っています。腎不全患者におけるこれらのホル モンの分泌障害は、塩分と水分の制御 害による高血圧を 引き起こします。

腎臓の主な機能は、老廃物や有害物や過剰な水分を、尿 として除去することです

5. 赤血球産生
腎臓が産生するエリスロポエチンは赤血球の産生に重要 である。腎不全ではエリスロポエチンが産生低下し赤血球 が減少(貧血)します。つまり腎不全による貧血はエリス ロポエチンの産生低下によるので、イオンやビタミンの補 足では改善しません。

6. 健康な骨を維持する
腎臓はビタミンDを活性型に変換して、食事からのカルシ ウム吸収、骨や歯の成長など、骨を健康に保つ為に重要な 役割を担っています。腎不全による活性型ビタミンDの不 足は骨の成長が阻害され弱くなります。成長障害は小児に おける腎不全の最初の兆候になります。

どのように血液が浄化されて尿が作られるのでしょう か?

血液を浄化する行程では、腎臓は必要なすべての物質を維 持し、余分な水分、ミネラル、老廃物を選択的に排泄しま す。

この複雑かつ素晴らしい尿生成の行程を理解していきま しょう。

  • 毎分1200mL の血液が浄化のために腎臓に流れす込。これは心拍出量の20%にあたる。1 日に1700 リットルの 血液が浄化されていることになる。
  • 血液浄化の行程は、ネフロンという小さな濾過装置によって行われる。
  • 一つの腎臓に約100 万個のネフロンがあり、ネフロンは糸球体と尿細管から出来ている。
  • 糸球体は選択的な濾過が出来る特殊な小さな穴がある“ふるい”であり、水や小さなサイズの物質は簡単に通り抜けられる。しかし赤血球や白血球、血小板、蛋白といった大きなサイズのものはこの穴を通り抜けられ。従って、健康な人の尿には大きなサイズの物質は含まれない。
  • 尿生成の最初のステップは糸球体で行われる。そこでは1一分間に125mL の尿が濾過される。24時間に180リットルの尿が生成されるということは驚くべきことである。底には老廃物やミネラル、尿毒素だけではなく、グルコースなどの必要な物質も含まれる。
  • 腎臓は大変賢くここから再吸収が行われる。尿細管に流れ込んだ180 リットルの原尿のうち99%は選択的に再吸収され、残りの1%が排泄される尿となる。
  • この賢い行程により、すべての必要な物質と178 リットルの水分が尿細管で再吸収され、1−2リットルの水、老廃物、余剰のミネラルと有害物質が排泄されるようになる。
  • 腎臓で生成された尿は尿管に流れ込み、最終的に膀胱を経て尿道から排泄される。
腎機能正常者の尿量は増減することができるのでしょうか?
  • もちろんである。摂取する水分量や気温は腎機能正常者の尿量に影響する。
  • 水分摂取が少なければ尿は濃縮され、尿量がおよそ500mL以下に減少する。しかし、たくさんの水分を摂れば、より多くの尿が出る。
  • 夏に高温で多くの汗をかけば尿量は減る。冬は逆のことが起こる。低い気温で汗をかかなければ尿が増えることになる。
  • 一般的な範囲の水分摂取をしても、尿量が500以下であったり、300mL以上である場合、腎臓に問題があるか検査する必要が出てくる。